健康情報 シールオイル

シール・オイル
メタボリックシンドロームが最近話題になり、摂りすぎとされる脂質(油)の量と質が問題視されています。その中で、シールオイル(ハープシールオイル)or(竪琴アザラシ)が注目されています。
シールオイルは多価不飽和脂肪酸(n-3系 オメガ3)のオイルで、DPAが豊富に含まれます。この脂肪酸は体内で合成することができない ( 必須脂肪酸 ) でもあり魚介・海獣に多く含まれます。疫学的にカナダのイヌイットが野菜不足でも健康なのはアザラシを主食とするからと言われています。その中に DHA、EPA そして特にDPAが多量に含まれているからとされています。
シールオイルは、カナダ大西洋北部に生息する竪琴アザラシ、ハープ・シール( Phoca greoenlanica) の油です。
シールオイルは、哺乳動物の油でありながら、魚油と同様、パルミトオレイン酸や長鎖多価不飽和脂肪酸であるEPAやDHAが多く含まれています。また、DPA(ドコサペンタエン酸)やという魚油には少ない脂肪酸が多いのが特徴です。
DPAは長鎖多価不飽和酸の一種で、EPAの10倍も血管内皮細胞遊走能(傷の修復能力)が高い事が発見され1)ています。パルミトオレイン酸は一価不飽和脂肪酸で、必須脂肪酸ではありませんが、これを含む食品はマカデミアナッツなど数少なく、一般の食事ではあまり摂る事ができません。パルミトオレイン酸も血管内皮細胞に取込まれ動脈硬化の予防に役立っている脂肪酸であります。
新鮮な野菜など無く、動物性の食物が中心のグリーンランドに住むイヌイットの人たちは、カロリーの大部分をアザラシの油から摂っています。しかし、25年間の調査で、同様に動物性脂肪からのカロリー摂取の高いデンマーク人に比べ、心臓で死ぬ人が極めて少ない事が判ったのです2)。食事 1,000Kcal当たりのコレステロール摂取量はイヌイットの方が多いにも関わらず血中のコレステロール濃度と、中性脂肪濃度は低いのです3)。この秘密はシールオイルにありました。
イヌイット デンマーク
冠動脈疾患死 3 40 (相対比)
脂肪からのカロリー摂取 39 % 42 %
血中コレステロール 233 mg/100ml 273 mg/100ml
血中中性脂肪 57 mg/100ml 129 mg/100ml
魚油の摂取は心臓疾患のリスクを下げますが、シールオイルはDPAが多く、コレステロールをより迅速に下げるのです4)。
残念な事に、イヌイットの人々の食事は、あまりに偏っているため、都会や工業化された地域に住む人々にはお薦めできるものではありません。特に、種々の抗酸化成分や、ビタミンを含む食物は摂る事ができません。EPA,DPA及びDHAなどの不飽和多価脂肪酸は、リュウマチや関節炎などの炎症に関与するサイトカイン(インターロイキンー1及び、6)を抑制します。このサイトカインは更年期後の女性ホルモン減少による骨量減少にも関与しています。冠動脈疾患、癌、アレルギー、関節炎、糖尿病、肥満骨粗鬆症など、多くの生活習慣病の原因が食生活と密接に結びついている5)、と言われる今日、少量のシール・オイルを天然のビタミンEと共に食生活に加える事の恩恵は計り知れません。また、成人だけでなく、乳幼児の健康の為に、妊婦の栄養補給としても重要です。
シールオイルのもう一つの特徴は、その化学構造にあります。脂肪はトリグリセライドというグリセリンに脂肪酸が3個付いたエステルで、魚油の場合は、長鎖脂肪酸が真中に付いていますが、シール・オイルの場合はいずれかの端に付いています。これがシール・オイルの効果が高く、中性脂肪が溜り難い理由です6)。

資源としてのハープ・シール
カナダ北東部からグリーンランドにかけての海は、鱈(タラ)の重要な漁場です。ところがハープ・シールは、500~600万頭も生息し、日本の漁獲量にも匹敵する800万t/年もの鱈を食べてしまいます。鱈漁が壊滅する可能性があるため、カナダ政府は毎年275,000頭の捕獲を許可しています。したがって、ハープ・シールは絶滅種保護のワシントン条約には該当しません。ワシントン条約で絶滅危機にある種に該当するアザラシはSouthern Elephant Seal( Miroung Leonina), Monk Seal( Monachus Spp)で捕獲は禁止されています。

シール・オイルの製造
シールオイルはこのアザラシの皮下脂肪から採られ、極力、油以外の部分が混ざらない様に注意深く扱われます。通常、AMI社によってカナダ水産省の汚染、腐敗、有害性が無い事の確認の下に製造されています。また、油に含まれる多価不飽和脂肪酸が非常に酸化し易いため、特別の精製方法が採られている上、天然ビタミンEが配合されています。このため、魚油の様な臭気は極めて少ないのです。また、当然ながらPCBや農薬などは検出されません。
シール・オイルの脂肪酸組成(分析例)
脂肪酸 炭素数:二重結合 含有率
パルミチン酸 16:0 7.1 %
パルミオトレイン酸 16:1 16.6
オレイン酸 18:1 25.3
リノール酸 18:2 1.9
リノレイン酸 18:3 0.6
ガドレイン酸 20:1 12.1
アラキドン酸 20:4 0.4
EPA(エイコサペンタエン酸) 20:5 7.4
DPA(ドコサペンタエン酸) 22:5 4.1
DHA(ドコサヘキサエン酸) 22:6 8.6
参考
1) 室田、森田 (東京医科歯科大) Prostaglandins, Leukotrienes and Essential Fatty Acids
54(5),319-325, 1996
2) Inuit diets and diseases Lancet,1:1139-1141, 1983
Kromann & Green, Epidemiological studies 1950-75
3) Barg and others, 1971
4) Christensen & Mortimer, 1996
5) Kane, 1996
Shahidi (Memorial University), J.Food Lipids 4:51-64, 1996
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 DPA(ドコサペンタエン酸) はアザラシオイルのほか、一部の鯨油にも含まれている成分です。DPA(ドコサペンタエン酸)とはアザラシやクジラなどの海洋哺乳類の脂質に多く含まれる多価不飽和脂肪酸です。アザラシなど海獣(英語でSeal)と呼ばれる哺乳類の脂質に多く含まれ、魚には少ししか含まれていません
DPAは動脈硬化の予防作用が非常に大きく、血管内皮細胞の遊走能を高める効果 (動脈硬化予防の指標の一つ)ではEPAの10倍以上もの効果が確認されています。
またDPAには「血管新生の抑制効果」 も確認されています。血管新生とは、すでにある血管から新しい血管が伸びるもので、 この新生を抑制することはさまざまな成人病の予防につながると期待されています。
このほか「シールオイル」 にはアレルギー患者の血液中に少ないとされる 「パルミトレイン酸」が多く含まれ、アレルギーを促進するとされる 「アラキドン酸」がほとんどふくまれていない ことから、アレルギーに対する効果も期待されています。

多価不飽和脂肪酸は水素との二重結合が構造上どの位置にあるかによりn-6系とn-3系に分類され、n-6系にはリノール酸系のベニバナ油、コーン油などがあります。またn-3系にはα-リノレン酸系の魚油(EPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸))、シソ油などがあります。 n-3系脂肪酸であるEPA(エイコサペンタエン酸)は 動脈硬化の要因となるコレステロール値や中性脂肪値の上昇を抑制する働き があることで知られています。DHA(ドコサヘキサエン酸)は、心血管系疾患や動脈硬化、脳内に非常に多く存在していることから、 神経細胞の情報伝達をスムーズにするなど、脳細胞の機能維持に重要な役割 を果たしていることが解明されています。
DPA(ドコサペンタエン酸)もこれらと同系で、最近の研究ではEPA(エイコサペンタエン酸)の10分の1の量でEPA(エイコサペンタエン酸)と同等以上の効果が認められるということが報告されています。
備考:シールオイル 健康 美容 DPA DHA EPA ドコサペンタエン酸 ドコサヘキサエン酸 エイコサペンタエン酸
 

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